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執筆者の写真Kentaro Ono

新しい論文が公開になりました!

西洋音楽でよく用いられるような和声進行と、デタラメに並んだ和音列を聴いたときに生じる脳波の違いについて検討した論文がScientific Reportsで公開されました(URL)。


この論文は、和音を予想しているときに脳の中で何が起きているかを調べたものです。和音と脳波と言えばStefan Koelschの一連の研究が有名ですが、彼は予測とは異なる和音が聴こえたときに右前部陰性電位(Early Right Anterior Negativity: ERAN)が生じることを報告し、それが特に和声進行における和音の予測が外れたときに特有な脳波であることを明らかにしました。その後多くの研究者によって似たような実験が行われ、和音予測の失敗とERANとの関係はわかってきました。しかし、和音の予測をしているときの脳活動についてはほとんど調べられていなかったので、私たちは音楽的な和声進行において予想通りの和音が聴こえる場合と、デタラメに並んだ和音列からまったく予想できない和音が聴こえてくる場合とで脳波にどのような違いが見られるかを検討しました。


ここで注目したのは、身体内部の状態、特に心拍との関連性が示唆されている脳波の成分である「心拍誘発電位(HEP:heartbeat evoked potential)」です。音楽的な和声進行は非音楽的な和音列に比べて聴いたときに快の感情を強く感じられることから、和声進行における次の和音を予測しているときにも快感情を感じるのに向けたなんらかの準備的な変化が生じているのではないかと考えました。


I-IV-V-Iからなるシンプルな和声進行とデタラメに4つの和音を並べた和音列を聴いてもらい、3つ目の和音が鳴ったら4つ目の和音に何が来るかを予測してもらうという課題を行ったところ、4つ目の和音を予測しているときのHEPの大きさに違いが見られました。またHEPの大きさは、4つ目の和音を予測する際の自信のなさと正の相関が見られました。これは、和音を予想するのと対応して身体内部の状態も変化している、あるいは変化の準備をしているのではないかと考えられます。


作曲家は音楽的な印象をつけるために聴き手の予想とは異なる和声進行を使うことがありますが、今回の結果は、こうした音楽的な効果が生じる理由のひとつと言えるのかもしれません。










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